空いた道でアクセルを深く踏み込むと、体がたっぷりとした本革シートに押しつけられ、意識が数十センチ後方に置いて行かれるのが解ります。そして脳裏に浮かぶのはこんな絵本の一場面:

おどろいたことに、アナグマは走っているのです。目の前には、どこまでもつづく長いトンネル。足はしっかりとして力強く、もう、つえもいりません。からだはすばやく動くし、トンネルを行けば行くほど、どんどんはやく走れます。とうとう、ふっと地めんから、うきあがったような気がしました。まるで、からだが、なくなってしまったようなのです。
アナグマは、すっかり、自由になったと感じました。

Susan Varley 作 ・小川仁央 訳「わすれられないおくりもの」より

実はこのあとアナグマは永遠の旅立ちをしてしまうのですが、ドライバーとして永遠に旅立ってしまうのはマズいので、常識的な速度域のうちにアクセルを緩めます。

ドライブシャフトブーツの交換に一週間ほどA3を預けている間、代車でA5 Sportback を借りました。2.0T(Tturbo) Quattro(4輪駆動)のS-LINE仕様です。税込み621万円もします。





シャーシは以前借りたA4 2.0T Quattroと同じだと思いますが、日本ではすっかり見なくなったハードトップボディのクーペスタイルの4ドアです。




A4ではあまりにも実用車すぎる…というユーザーのための、流麗なボディ。




内装は基本的にはA4と同じ。スイッチ、レバー類一つ一つの感触まで設計されているのはAudi車に共通ですが、それでもふんだんにアルミを用いたりして、A1/A3あたりとは明らかに格の違いを感じさせます。




本革巻ステアリングにもグレードってあるんですよね。
どきにも嫌なタッチの縫い目を感じない仕上げ。恐るべし。




S-Line用の、肩をしっかり支えてくれるシート。
但し意外にも、ヘッドレストは前後調整不可です。




バイザー裏のミラーの蓋すら、いちいち滑らか。




Sportbackの名の通り、リアが大きく開きます。持ち上げたゲートの裏側にも照明が付いているのが嬉しいポイント。




そんなに背の高いものは載りませんが、それでも大きく開くと出し入れが楽なケースもありますね。


さて、走らせてみると、普段の街乗りでは超低速からモリモリとトルクが出るエンジンと7速DSGのお陰で1,500rpm以上回ることはほとんどありません。そしてその回転域で普段は充分速いです。一方、少し強めに踏むと2,000rpm以上まで回るようになりますが、キャラクターが一変します。冒頭に書いたような加速と、そして一緒に信号でスタートした他の車がバックミラーの中でみるみる小さくなります。それでも頑張っている感じがしないのです。

しかしその一方で、高速道路の法定速度を超えるような領域だと、さすがに2.0Lカーの限界をやや感じます。だから2.6Lとか3.0L、4.2Lの存在価値がある訳ですね。でも日本ではこれで充分以上です。

足回りは市街地走行ではドイツ車というイメージよりはかなりしなやかでしたが、高速域になると一変して硬くなります。A3とは逆のセッティングなので驚きましたが、大出力でしかもQuattroで確実に地面を蹴るには、こういうセッティングは必然だったのかも知れません。でも市街地でしなやかなのは羨ましいなぁ。

お借りした車体は2013年登録、走行1,100kmのほぼ新車でしたが、7速DSGは相変わらず渋滞が苦手でした。ギクシャクします。2速以上はウルトラスムーズなんですが。あと後退で段差乗り越えも苦手ですね。A4だとCVTモデルがありますが、意外とCVTの方がキャラクターに合ってるかも知れません。

クルマ通勤が必要で、仕事以外でストレスを感じたくないなら、このクラスのクルマがあるといいですねぇ。本当に通勤でストレスが少ないです。陸を走るビジネスクラスですね。そしてA4ではなくA5 Sportbackなら、休日に使ってもいい遊び心が感じられます。

ああ、そういえば勤務先では基本的に全員飛行機はエコノミークラス指定でした。
我に返りました(笑。