国立大学法人京都大学 / 株式会社日立製作所:「AIの活用により、持続可能な日本の未来に向けた政策を提言」

要旨:

AIを用いたシミュレーションにより2018年から2052年までの35年間で約2万通りの未来シナリオ予測を行った。

2050年に向けた未来シナリオとして主に都市集中型と地方分散型のグループがある。

a) 都市集中シナリオ

主に都市の企業が主導する技術革新によって、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、個人の健康寿命や幸福感は低下する一方で、政府支出の都市への集中によって政府の財政は持ち直す。

b) 地方分散シナリオ

地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大する。ただし、以下に述べるように、地方分散シナリオは、政府の財政あるいは環境(CO2排出量など)を悪化させる可能性を含むため、このシナリオを持続可能なものとするには、細心の注意が必要となる。

約1年前のリリースですが、ちょっと見落としてましたね。
「未来の選択可能性」ネタは「まどか」あたりからブームになって、明確な敵を描写できない最近のアニメでは鉄板のネタになりつつありますが、現実世界でこういう予測をされると鳥肌立ちますね。

私の認識では「もう地方インフラは維持が不可能なので、都市に集中して住むしかない」という路線(上記の「都市集中シナリオ」に相当)しかないものだと思っていましたが、「地方分散シナリオ」も持続可能な未来の選択肢としてありうるんですね。

ただ、リリースを読むと「地方分散シナリオ」を選択した場合、その後「約17〜20年後まで継続的な政策実行が必要」とあります。これはこれで選択肢としてはしんどいし、これを実施する気概のある指導者は日本には何人もいないと思うので、おそらくこの判断結果を見て、日本全体では「都市集中シナリオ」が選択されるのだろうと思います。

そして「個人の健康寿命や幸福感は低下する一方で、政府支出の都市への集中によって政府の財政は持ち直す」未来が来るわけです。結論としては「もう地方インフラは維持が不可能なので、都市に集中して住むしかない」という今まで言われていたことと同じなわけですが、そこにAIによって「健康寿命や幸福感は低下する」という予測が示されてしまったという、なんとも切ない結果ですね。

もっとも、数年のコラボと、今の水準のAI、そして今のモデル化水準ではどこまで予測できているのか怪しいところはありますが、1年前の段階でもうここまで来ていたのかと驚きを禁じ得ません。

未来って、AIに予測してもらっていいものなのかな。

いいんだろうな、きっと。