さて個人的にはiMacの衝撃の影にすっかり隠れてしまった感のあるiPad miniだが、ネット界隈の微妙な空気感を纏めると、主に以下の三点に収斂されるだろう。

(1) Retinaじゃない
(2) 少し高くない?
(3) 概ね事前情報通り

期待は確かに Retina なのだが、冷静に考えてみれば Retina 化は無理が多い。まずAppleがRetinaを仕立てる場合、今までのRetina製品は基準となる解像度の縦横2倍となっている。スケーリングやアプリ互換性を最大限に配慮した結果だと思うが、iPad miniで基準となる解像度(1024x768ピクセル)の2倍となると、フルサイズのiPadと同じ2048x1536ピクセルとなるが、7.9インチで大量調達可能な、2048x1536もの画素を持つパネルは現存していないのではないか。

ipad_mini

仮に現存していたとしても、各ドットの開口率が低いため、フルサイズiPadのRarinaと同じように、バックライトを相当明るくしないと画面の明るさが確保できないはず。バックライトの電力は消費電力に占めるウエイトが大きいので、使用可能時間が短くなってしまう。重量がフルサイズiPadの半分になったとしても、バッテリー寿命も半分になってしまったのでは、それはそれで「ちょっと違う」と考える顧客は多いだろう。

基準解像度をもう少し下げるという手もあるが、基準解像度を無闇に増やすのはアプリ開発者の負担を増やし、落ち着くまではみっともないルックスのアプリが増えかねない。これはこれで避けたいところ。

Retina 化しなかったもう1つの理由は、外で持ち歩くのが容易なサイズゆえ、それほど画質を追求する根拠に乏しかったからではないかと思う。「音楽を外で聞くのに何万円もするヘッドホンを使ったところで違いなど分からない」と感じるユーザは少なくないそれと思うが、それと同じ理屈で Retina 化は必須要件でないと考えたのかも知れない。

では iPhone の Retina はどうなのよ?と思われるだろうが、iPhone については「この端末が全宇宙であるユーザーの多さ」と「ライバルの強さ」が、いずれも iPad mini より全然高スコアと考えらるため、商品の魅力性を高めるために必要だったのかなと。あと実使用されるフォントも iPhone の方が小さいし。

iPad mini は左右の額縁がすごく狭いのが印象的なのだけれど、ここはギリギリ片手で持てるために iPhone に近い額縁の狭さで足りると考えたと思われる。

価格については高い…というよりは、他社製のライバルが安すぎるのだろう。機器単体できちんと利益を上げようと思ったら iPad mini くらいの価格になることは必須のはず。タブレット端末は Apple に継続的にお金が落ちる(ユーザが App を購入する)使い方ばかりではなく、ビジネスや教育用途で定められたアプリを延々と使い続けることも想定されることから、端末だけでキッチリ利益が上がる値付けにしないとまずいだろう。もっとも、iPhone が6万7万することを考えると、割安ではあると思う。もう Apple は安売りでシェアを伸ばすような会社じゃないだろうしね。

発売は後数時間後。自分としては、来年以降に iMac の方かなぁ。