機会があったら見たいと思っていたのですが、ようやくその機会があったので鑑賞。2010年という、日本ではfacebookが盛り上がりつつあるタイミングで封切られたこの作品ですが、facebook疲れな方々が出てきている2012年のこのタイミングで見るのはちょっと微妙。Bさんに遅れること約1年(笑

とはいえfacebookの勢いは失われているかといえばそんなこともなく、mixiやGree、ひいてはLinkdInとの比較論は現時点でも後が絶えません。どういったSNSでも栄枯盛衰はあるので、最初は物珍しく使い始めてもそのうち人の流入が多すぎるようになり居心地が悪くなり、次の新しいSNSに移住して行く…というのはもはやパターン化していると思います。ただ、日本でのfacebook導入といえば、ちょうどmixiの運営ポリシーがブレまくっていた時期に重なり、mixiに嫌気がさしたユーザーが次の居場所として大量流入した面はあるかと思います。

北米版だとポスターの映画のロゴが「facebook」を連想させるデザインになっているのですが、日本語版だとちょっとそうは見えないのが惜しい。事前に日本語版のポスターは見ていたのですが、映画中でタイトルが出たときに「ああ、そうか」とニヤッとしてしまいました。

The Social Network
(c) Sony Pictures Digital Inc.

ストーリーはfacebookを立ち上げる過程を描いた回想シーンと、現在進行中の訴訟準備のための証言取りシーンが交互に展開される作りになっています。私自身はこの映画を見て、特にサービスが立ち上げられる過程を見て、ますますfacebookというものが分からなくなった一方で、「エロがなければメディアは普及しない」と言われますが、facebookとて例外ではなく、青春を持て余す名門大学生の受け皿だったわけですから、極東の中年男性(私です)が使って違和感はあるのはある意味当然だなと思いました。

自宅のテレビで視聴したのですが、物語の最初から30分はgeek用語が飛び交うので予備知識のないツマには退屈なようでした。実は用語を知らなくてもストーリーの本質である「天才/裏切り者/危ない奴/億万長者」にはあまり関係ないのですが、確かにこの手の映画では「geek用語を知っていればもっと面白いのかな?」と思われても仕方がないかも知れません。

映像は特筆すべき美しさで、プラズマテレビ向きの深い階調のシーンが続きます。「どうしてこんな美しい映像でオタクを描くんだ!」と笑ってしまいそうにもなります。本作はfacebook社の協力をほとんど得ずに作られたと聞きましたが、かえってそれが単純なfacebook賞賛映画にならなかった点で良かったのではないでしょうか。どうしても協力をもらうと好意的なバイアスがかかってしまいますからね。鑑賞後に余韻の残る音楽も良かったです。

この映画の見せ場は会社の飛躍的発展に置いて行かれるように発生する人間関係の亀裂だと思うのですが、共同創業者でCFOのエドゥアルド・サベリンとの確執が生まれる過程は、どうしてこうなっちゃうかなぁと見ていて歯がゆいですね。若気の至りなのか…でもまあ、人間関係が破綻するときってそんなものですかね。

ラストシーン。マーク・ザッカーバーグが一度はブログでこき下ろした元恋人に向けてfacebookのメッセージを送信し、返信を期待して「F5」キーを連打する姿は微笑ましかったですね。ああ、やっぱりビリオネアでもこういう若者なんだというところと、こういった湿っぽい感情は民族に関係ないんだなという点で。

いい映画でした。geek用語が分からないと取っつきにくいかも知れませんが、各方面からの評価が高いのも納得の出来映えです。