そんなわけでA3を点検で預けることになったので、代車でA1を借りた。

Audi A1

Audiの中でエントリーモデルとなるA1の3ドア車である。本国では昨年に5ドアモデルが設定されたので、遠からず日本でも発売になると思われる。

パワートレインは1.4リッターのTFSIエンジンで、直噴エンジンにターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせ、122ps/20.4kgmもの出力を持つ。これに7速のDSG(Sトロニック)トランスミッションが付いている。お借りしたクルマはさらに「スポーツパッケージ」というメーカーオプションが装備されており、215/45-R16という車体サイズからしたら持て余すのではないかと言うくらいのタイヤを履いている。


Audi A1

走り出してみるとAudi前者に共通の「固い殻」感はそのままに、さらにスポーツパッケージ専用となるサスペンションの硬さが印象的。遮音性能は高く周りのクルマの音は小さめだが、太いタイヤから出るロードノイズも盛大だ。まだ2,800km程度しか走っていない車体なのでこれからどんどんこなれてくるのかも知れないが、個人的にはここまで硬くなくても…という思いはある。

このクルマのTFSIエンジン+7速DSGで現在の水準からすれば充分エコなのだが、さらに自動アイドリングストップ機能が装備されている。停車して2秒ほど経つとエンジンが自動的に停止し、ブレーキを踏んだ足を緩めると、スターターによってエンジンが目覚める。

アイドリングストップ状態からのエンジンの目覚めはウルトラスムースという訳でもなく、やはりスターターを回して起動しているという印象は強い。「キュルキュル」という音だって出るし、始動に1秒程度かかる。ワイパーが動いていれば始動の瞬間に一瞬静止するのも普通のエンジンスタートと一緒だ。


Audi A1

信号待ち状態からスムースにスタートしようと思ったらエンジンの始動が完了してからアクセルを踏むのがよく、すると前のクルマとは1台分くらい車間が空いてしまう。日本の道路の流れからはややルーズに見える振る舞いだ。

しかしアイドリングストップによる燃費節約効果は絶大で、エンジンを回していないのだから当たり前なのだが、停車中にほとんど平均燃費が下がらない。再起動に少し余計にガソリンを食うのだろうが、信号待ちでガソリンを垂れ流しにしていない心理的な負担の軽さは気分がいい。

ただこんなにエンジンを頻繁に再起動して、耐久性は大丈夫なのかという不安は払拭できない。街乗り中心で使うのであれば、アイドリングストップが装備されていない場合と比較して数十倍はエンジン始動の回数は増えるだろう。本当にそんな耐久性があるのだろうか。ハザードランプスイッチのすぐ近くにアイドリングストップ機能をオフにするスイッチがあるところからも、ややお試し色の強い機能なのかなとも思った。


Audi A1

内装を見回してみるとA4ほどとは言わないが、私の6年前のA3より高級感はある。運転していても小さい車に乗っているという印象はあるが、安っぽい車に乗っていると印象は全くない。それもそのはずで、スポーツパッケージに純正ナビまで付いたこの車体の価格は314万円。安っぽくては困る。

運転席は安全性確保のためか、やや内寄りに配置されている。助手席との距離は近く、ドアからは遠い。運転中に肘をドアにかける(適切な姿勢ではないが)姿勢は取りにくい。左足周りもボディサイズの割には窮屈感がある。

インパネはソフトパッドではないが、2種類のシボ模様が使い分けられており、見た目の高級感は充分。LEDによる足下照明や、ドアハンドル内側の間接照明などもあるが、その照明類は「スポーツパッケージ」に付帯するもののようだ。

Audi A1

シフトノブはマニュアルトランスミッションを連想させるスポーティな丸ノブだが、シフトロックボタンが前部に付いており、人差し指または中指で押すことになり、なかなか力が入りにくい。親指でロックボタンを押す普通のATノブの方が馴染みやすい。


Audi A1

車内全体の広々感は左右方向はA3と遜色ないが、後ろを振り返るとクルマの小ささを実感する。後部座席は大柄の大人が乗るのは辛いサイズで、背筋は立ち気味に、お尻はかなり深く落とす姿勢になる。チャイルドシートを取り付ける場合にはモデルを選びそうなので、現物を確認した方がいい。なお後部座席は2人乗りで、中央部にはシートベルトが用意されていないどころか、ドリンクホルダーがある。オーディオスピーカーも後席専用に2Wayのものが用意されているし、狭さとは裏腹に装備面では虐げられていない。


Audi A1

それと、後部座席に乗り込むためにフロントシートを前に倒す際(ウオークイン機構)、シートのバネの力が弱いので、坂道などでクルマの前部が持ち上がった状態だとシートが戻ってしまうので注意が必要。国産車と違ってシートの角度調整機能とウオークイン機構が別のためだ。

ナビの開閉は電動かと思ったが手動のようだ。ある程度音声による操作が可能だが、認識水準はナビとしては標準的で、iPhoneのSiriなどと交互に使うとその水準の差にやや戸惑う。モニタ取り付け位置が運転席からやや遠いので、画面サイズはもう少し大きい方が見やすかっただろうと思う。

しかしナビに付属するオーディオのBluetooth対応が超絶使いやすくて驚いた。ポケットの中のiPhoneの曲を無線で再生可能だし、スキップ選曲は車側から可能だし、降車すればiPhoneも停止するし、乗車すれば自動的に再生が始まる。これは便利。

なお今年モデルから純正ナビがオプション扱いになっているが、その場合でも液晶モニタ自体は装備される。車体の挙動の各種設定や、オーディオの操作など、この画面を使うことが前提になっている操作が多いためだ。


Audi A1

まとめると、アウディに対する期待品質には充分応えているので、価格に妥当性が感じられるのであれば買って間違いのない1台と言える。予算はある、安っぽいものは欲しくない、でも目を皿のようにしてカタログスペックを比較することもしない、という「メルセデス保有世帯のセカンドカーとしてヤナセが売っていた頃のAudiの需要」には見事にマッチしている。ただ、都市部のファミリーユースで1台だけ所有するのであれば、5ドア版A1の登場を待つか、価格的に大差ないA3SB 1.4TFSIが順当のように思う。

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京商 Kyosho 1/43 【03801AW】 アウディ A1(アマルフィホワイト)