SIGMAのDPシリーズにはレンズ焦点距離が28mmのDP1系と、41mmのDP2系がある。DP2系の第三世代で最新モデルがこのDP2xである。誤解を恐れずに言えば、DPシリーズというのはFoveon X3センサーを使うためのコンパクトカメラである。他社同等クラスとは目指すところがまったく違うし、期待される機能がなかったりする。

foveonx3
(DP2xカタログより)

Foveon X3センサーについてはご存じの方も多いと思うが、1画素でR/G/Bの光の三原色をすべて取り込める特殊なCMOSセンサーである。多くのCMOSやCCDではR/G/Bのそれぞれに反応する画素が格子模様状になるよう、色分解フィルターが撮像センサーに重ねてある。このR/G/Bの配列を「ベイヤー配列」と呼び、緑が赤と青の2倍あるのは、人間の色覚が緑に敏感なためだ。

ベイヤー配列では青の画素では緑や赤を取り込めないし、他の色の画素でも同様だ。つまり光を取り込んだ1画素から写真の1画素を生成しているわけではなく、4画素から4画素を演算により生成しているのである。これが解像度的に不利であることは明らかだが、多くのCMOSやCCDは今までずっとそうしてきたのである。この原理を知ってしまうと、なんとなくモヤモヤした気持ちになるだろう。

また4画素から4画素を演算により生成するということは、「元の絵を推測」しているとも言える。推測は所詮推測であり、現画像とは異なる。推測したもの同士の画素を1枚の写真に並べた結果、「偽色」や「モアレ」と呼ばれる現象が発生してしまう。これを避けるために、一般的なCMOSやCCDには「ローパスフィルター」が重ねられている。ローパスフィルター、すなわちロー(低い周波数)をパス(通す)フィルターは、ハイ(高い周波数)をカットする。映像で「高い周波数」とは、即ち細かい映像のこと。ローパスフィルターとは、映像をわざと「ぼかす」フィルターのことである。「偽色」や「モアレ」は減らせても、同時に映像の細部も失われてしまう。

Foveon X3センサーはR/G/Bのセンサーを重ねて配置することで、ベイヤー配列にあるモヤモヤ感を解消しようとした。図で解るとおり、すべての画素で全ての色を取り込める。まるで銀塩フィルムのようだ。原理的にローパスフィルターも不要なので、映像の細部も失わずに取り込める。

しかしその一方で、Foveon X3センサーは画素が少ない。カタログスペックでは「約14.06MP (2652×1768×3層)」となっている通り、実際に得られる画像は 2652 x 1768 = 469万画素 である。だったらベイヤー配列の1,600万画素くらいの撮像素子で400万画素程度の画質モードを使って撮影すれば同じなんじゃないの?というアイデアは当然思いつくだろうし、実際ユーザーレベルで「Foveon風」の撮影・現像をするテクニックも見られるが、やはり全ての画素で全ての光を受けていない点と、ローパスフィルターの存在に起因するのだとは思うが、Foveonを越えることはできないようだ。


彫刻の森美術館

この画素数の少なさが必ずしも欠点になっていないのがFoveonセンサーの面白いところで、実質たった469万画素しかないのに、恐ろしく緻密感のある写真が撮れる。今までCCDやCMOSの写真を見てもまったく不思議に思わなかったのに、一度Foveonの映像を見てしまうと「自分は今まで何を見ていたんだ?」という感覚に襲われるだろう。

そんなFoveonでも欠点が存在する。それは高感度に弱いこと。センサーを三層重ねているので、どうしても下のレイヤーほど届く光が弱まってしまう。最下段に赤のレイヤーが来ているせいなのか、赤の発色が飽和しやすい傾向も見られる。光から得られる信号が3層で揃っていないので、デジタル化した段階で量子化歪みも生じやすい。この量子化歪みはカラーノイズという形で目に見えてしまう。

今回、DP2xではAFE(アナログフロントエンド)という回路を搭載して、この欠点の低減を図っている。AFEについては先にDP1xにも搭載されているが、撮像センサーから得た映像信号をアナログの段階で補正をかけ、より理想的な形でデジタル化しようというものだ。

ただ、いくらAFEを搭載したからと言っても、その効果は「前のモデルよりはよい」という程度であり、現在の撮像素子の、しかもフルサイズセンサーCMOSの水準からすると、かなり高感度は苦手な部類である。ISO100〜200、ちょっと譲ってISO400あたりまでが実用域だと言っても良い。ちょっと照度が足りないとブレてしまうので、苦労がつきまとうケースも多い。三脚が必要になる場合や、そよ風が止む一瞬を延々と待たなければならないこともあるだろう。

しかしそれを乗り越えてでも得たい画質が、Foveon X3には、DP2xにはある。

センサー周りだけで長くなってしまったので、続きはまた。


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