ソニーのミラーレス一眼カメラ「NEX」について、先日のNHK「Bizスポ」に加えて、日経Tech-onまでもが「普通すぎる」という趣旨の意見を述べている。(Tech-Onは登録必要なのでリンクは貼らないでおく。)

Bizスポなんか特に酷いもので、開発リーダーの手代木氏をスタジオに呼びつけておいて、これは只のカメラですよね?とまで言い放った。ソニーに期待するのは只のカメラではない、もっとユーザーに新体験をもたらしたり、生活を変えてしまうような製品だと言うのだ。

勿論、ソニーは過去にも生活を変えるような製品を生み出してきた。しかし当然だが出す製品すべてがそうであるわけはない。ソニーは今回、きわめて真面目に1台のカメラを作ってきた。短い開発期間なりに、未熟な部分はもちろんある。ソニーが出してきたものをなんでも礼賛しようという気もさらさらない。

しかし新しい製品は何が狙いで、何が凄いのか。一般ユーザーならともかくマスメディアまでもがそこを正しく見極められず、やれあれができない、これがない、ビックリドッキリメカでないだの的外れの批判をする。稚拙な評価しかできない市場には、稚拙な製品しか残らないと言うことが解らないのだろうか。

「これは只のカメラですよね」は、少なくとも手代木氏に言う台詞ではないだろう。iPadを引き合いに出すなんてピンぼけ過ぎる。iPadとNEXの共通点なんて、iPadの予約開始日とNEXの発表日が同日になったことくらいではないか。そんな大枠の話がしたいのなら、もっと上位の人でないと話にならない。

海外で作っているから日本のモノ造りが空洞化してどうの、なんてのもおかしな話。もう分野によっては日本に工場がなくなるのなんてとうに決定事項。デジカメ絡みでそんな話をしたいのなら、海外のEMSを使う苦労話でもインタビューして貰いたい。

一般報道向けにしてはマニアック過ぎるとしても、フランジバックが18mmだから何なのか。なぜ17mmにしないのか。マイクロフォーサーズよりイメージャーが大きいのに、フランジバックを短くすると光学的に何が起きて、ソニーは今回何を諦めたのか。メニューの第一階層はなぜ不自然な仕上がりになってしまったのか。開発スタッフが絶賛するシャッター音はどう造り込まれていて、それで納得できるのか。

NHKはともかく、Tech-Onはそれくらい言及してもいいのではないか。

にしてもBizスポ、第1回目の放送から内容が稚拙すぎるのではないかと思っていたが、今回の放送で確信した。まぁ新人向けなんだろう。少なくとも中堅以上のサラリーマンが見る番組ではなさそうだ。

--
ちょっとピンぼけ (文春文庫)