NHKバーション「クライマーズ・ハイ」(AA)の出来が秀逸だったので、劇場版が出来たと聞いて「あのNHK版は超えられないだろう…」と不安を抱きながら見に行ったのだが、杞憂だった。

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携帯電話やパソコンが普及していない1985年。個人の仕事はパソコンの中で不可視化されておらず、誰が何をしているかは一目瞭然。仕事の現場は熱かった。何が「クライマーズ・ハイ」なのかは、主役、悠木が成長した友人の息子とともに谷川岳にアタックするシーンから、20年前の「あの1週間」にフラッシュバックすることで説明される。

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クモ膜下出血で倒れてしまう友人、凄惨な現場を目撃して精神崩壊してしまう部下、保身のために悠木を陥れる上司、悠木を飼い犬のように扱う社長、悠木と心が離れてしまう息子、そして日航123便。自分の役目は何か、仕事とは何かを深く考えさせられる。

県警キャップ・佐山の手記
「自衛官は天を仰いだ(中略)空はこんなに青いというのに(中略)女の子の、あるはずの左腕を探して」

乗客の遺書のシーン
「本当に今迄は 幸せな人生だったと感謝している」

この2つのシーンで泣けた。

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劇場観客の平均年齢は高かったっすね。40代〜が中心かな。ある程度の年齢にならないと、登場人物たちの葛藤は伝わらないはず。もし20代でこの映画に感動したならば、40歳になったときにもう1回見るとまた共感の仕方が全然違うはず。全然どこがいいのかワカンネ、という若者は、15年仕事に打ち込んで中間管理職になってから観るとこの作品の重さが解るはず。

NHK版もいいけど、劇場版もかなりいい出来だった。フィルムの質感が1985年という時代の再現にピッタリだ。